為末さん、聴いてください、子育てのこと。

為末 大

2024/09/12

Athlete Entrepreneur 子育て
Spotify Amazon Music Apple Music

 
為末さんはどうやって子育てをされているのでしょうか?
お寄せ頂いたご質問に回答しながら、教えてくださいました。
 
00:26 『不登校をそのまま受け入れてもらえない』(いっちゃん さん)
07:54 『反抗期の息子ともう1年も話していない』(40代女性)
12:13 『自分の子どもがあまり好きじゃない』(匿名)
17:44 『子どもが切れやすい』(匿名)

スクリプト・文字起こし

00:00
リカバリーストーリーは、様々な人に悩みから立ち直った経験や考え方の工夫、日頃のストレス予防法や解消法を自由に話してもらうポッドキャストです。今回は「子育て」に関して質問を募集したんですけれども、これに答えていきたいと思います。ご質問いただいた皆さん、どうもありがとうございました。

00:26
『不登校をそのまま受け入れてもらえない』(いっちゃん さん)

まず1人目はですね、『いっちゃん』さん、30代の女性の方です。『不登校の子どもがいます。学校以外の居場所が非常に少ないため、親子共々困っています。未だに、学校に行っていないことを親族を含め、近所などの周囲に受け入れてもらえないことがまずしんどいです。また、受け入れているように接してくる方々への対応や答え方にもストレスを感じます。このようなことを理解していただける、理解されなくてもそのままを受け入れてもらえる場所などがあれば、少しは気持ちが楽になると思っています。』

00:59
いや、これは本当に子どもも不登校でいろいろ悩みもあるんでしょうけれども、不登校のお子さんがいる親御さんが本当にいろいろ悩みが多くあるんだろうなと思うので、まずはよく頑張ってらっしゃるっていうか。お会いしたこともないですけども、本当に頑張ってらっしゃるな、と思います。

不登校のお子さん増えてますよね。これを巡っていく中でよくあるのは、私が今46歳ですけど、その年齢より上の方でよくあるのは「いや、不登校はあり得ない」と、「もうそれは我慢して学校に行くのが大事なんだ」っていうものがありますし、もう少し理解がある方でも「そうか大変だな。だけど、世の中いろいろ我慢することもあるから、学校行くのも大事だよね」っていうものですね。それで、もう1つ、「逆サイド」っていうかそれに行くと、「もう学校に行く時代じゃなくて、これは選択なんだよね」っていうものがあると思うんですね。

それでまず、不登校に対しての社会のとらえ方っていうのが、「昔は我慢できたのに、今は我慢できない」っていうものがあるんですけど、それはそうで、昔の会社って考えてみると、タバコが吸えて、長時間労働が当たり前で、「女性はお茶くみで男性が働くんだ」みたいなものもあり、無茶苦茶なわけですね、「飲み会断れない」とか。今我慢できるかっていうと、コンプライアンスでできないっていうのもありますけど、そもそも我々がやっぱり我慢できないですよね、そういうもの。そう考えると、社会が許容できるものっていうのは、ずっと時代とともに変わっていっていて、そうなんだけれども、やっぱり学校ってどうしても今の仕組みや「先生が前に立って生徒が座って聴いていて、みんなが同じスピードで動いていく」っていうことがありますので、やっぱりちょっとそれが合わないっていう子どももいるだろうと思うんですね。しかも結構たくさんいるんじゃないかと思うんですけど、まずその前提で、これからは「学校に行く・行かない」っていうのは選択で、しかも不登校っていうか、公立校とか私立校っていう既存の学校に行くか、別の教育の仕組みでやるかっていう、そんな選択の違いになるんじゃないかと思っています。

そのうえで「そうなるべきだし、もうそうなってるよね」って思いながら、一方で社会の仕組みが追いついていないですよね、やっぱり。両親共働きの方が多いと思いますけど、共働きでとにかく両親とも日中はいなくて、子どもが学校に行ってる前提で社会が全部できてますから、じゃあ「既存の学校に行かないってお子さんがどこ行けばいいんだろう」とか、「学び方の多様なやり方って他に何があるんだろうか」っていうことが、ちょっとそろっていないということだろうと思います。

それは急いで作っていかなきゃいけないのと、いろんな方に相談していく。相談するって言っても、余裕がないんですよね。たぶん、私と私よりちょっと下の世代ですけれど、30、40代って本当に時間に余裕がないと思うので大変ですけど、できれば周辺の方に頼っていけたらいいなと思います。

それで、もう1つの、ストレスですね。これはやっぱり思ったより私たちって社会の価値観を受けちゃうわけですね。それで「自分たちはまあこの生き方でいいか」っていうふうに納得してても、周りが「良かれ」と思って別の価値観で話してくることがあって。簡単に言うと、分かってもらえないわけですね。たぶんここで書かれている『受け入れているように接してくる方々への対応や答え方にもストレスを感じる』っていう、これが『受け入れている方々』じゃなくて、『受け入れているように』っていうところに、たぶん『いっちゃん』さんのストレスの大きな点があるんだと思うんですね。

ちょっと別の話ですけど、僕、友人でLGBTQの友人がいて、一生懸命活動してて素晴らしいんですけど、いろんな方に説明に彼が行ったりするときに付いていって説明を聞いたりすることがあるんですけど、「よくわかる、わかる。もう、それはこれからの時代、それすごい大事だよね」って言われるんですけど、やっぱりそれが「本当にわかる。そういう人たちのなんか悩みが分かる」っていうパターンと、「そういう方々」っていうふうに「別カテゴリに置く」パターンがあって。これパラリンピアン(に対しての言われ方に)もちょっと似てる印象を受けるときがあるんですけど、別のカテゴリに置いて、それを観察しながら「分かる」って話と、その人の中に自分を見出して「分かる」っていう話って、やっぱり違う所があって、やっぱり相手の中に自分にも思っている要素を見い出して「ああ、そうなんだ!」っていうふうに思うことができるかどうかっていうのが、難度もなかなか高いだろうと思うんですね。でも、そのあたりと言うんですかね、「頭で分かった」ふうと、「体からそれがわかる」って話ってやっぱり違うと思うので、そのへんが『いっちゃん』さんのストレスなんじゃないかなっていうふうに思うんですね。

お子さんの中にある悩みは非常に深いんですけど、それを見ながら親も苦しいっていう状況だと思うんですけど。1つはですね、私がもしアドバイスできるとしたら、いろんな方に、ともかく近い状況の方とつながれて話せるってことはとっても大事で、その場合、理解されていないストレスは感じにくいんじゃないかっていうのと、いろんなアイデアが出てくるんじゃないかな、と思います。ちょっとここでは具体的なアドバイスがなかなかできないのは申しわけないですけど、でもそんなふうに分かってくれる人は必ずどこかにいます。同じ状況の方が必ずいるわけですね。そういう人たちに話してみるようなことができるといいんじゃないかなと思います。

最後になりますけど、私の友人で柳川先生って方がいるんですけど、東京大学の経済学の先生になられましたけど、この方は中学校の途中ぐらいから学校行ってなくて、高校も行ってないんですね。で、その後、大学検定で慶應大学に入って、今、東大の経済学の先生やられてますけど、「独学はいいもんだよ」っていうのが、実はその先生と私の結論なんですね。「世界は広くて、人生はなんとかなる」っていうのが我々の考え方なんですけど、是非ちょっとそんなこともお子さんに話していただければなと思います。

07:54
『反抗期の息子ともう1年も話していない』(40代女性)

次のご質問は、40代の女性の方ですね。『私は今、反抗期の息子との接し方に困っています。息子は高校1年生なのですが、もう1年間、会話らしい会話をしていません。本当にこの反抗期は終わるのでしょうか・・・。為末さんはいつごろ反抗期がありましたか?そのとき、親御さんにどのように接してもらうと嬉しかったですか?』

08:17
いや、これはですね、なんて言うんでしょう。あったと言えばあったっていう感じですかね。でもまあ、そんなに大きいものではなかった気がしましたけども。これ、でもまずですね、特に男の子ですよね。とても健全なことだと思うんですね。

私が見ていた中で、40代になって苦しんでいる男性は、親に対して対抗できなかったってパターンがとても多いんですね。特にお母さん(に対抗できなかったパターン)が多いんですけども、お母さんが依存形で抱きしめて、全部を支配まで行かないんだけど、なんか一体になろうとするような感じがあるお母さんの場合で、子どもが優しい場合にそのお母さんを突き放せなくて、そのままお母さんと一体になっていきすぎちゃって、30、40代でやっぱり自立心ができないわけですね、自我がうまく生まれてなくて、それで苦しんでいる場合があるんですね。反抗期は一体であった親子の間を切り離す、必要な儀式だと私は思うので、人によってそれが大きい小さい、長い短いあると思うんですけど、とても良いことなんじゃないかなというふうに思ってます。

そういうふうに客観的にはそうなんですけど、ご自身はたぶん非常に辛いだろうな、と思うんです。どういう状況か分からないですけど、私が母親に対してとっても感謝しているのはですね、家が淡々とまわっていて、朝ごはんと晩ごはんがあったっていう。もうこれですね。これがあるだけで人生の基盤ができたと思ってます。

私の高校生の時は、中学校で特殊な人生で(陸上競技で)全国で1番になって、高校に入った後に怪我をして全然走れなくなるんです。高校1、2年かな。それでうまくいかなくなって、がんばるんだけど、ちょっと自暴自棄とか、荒れるみたいなことのちょうどあいだを行って、ものすごく当時は危うかったなと思うんです。母親としても言いたいことはいっぱいあったと思うんですね。荒れる私と。

それで1回、覚えているのは食卓の場所で、「どうせ陸上がなくなった俺には価値なんてないんだ」っていうのを言ったのをすごい覚えてるんですけど、それをちょっとびっくりしたような顔を母親がしたんですけど、そのまま静かに時間が流れて、次の日の朝起きてたら朝ごはんが淡々と作られてたっていう。何て言うんでしょうね。やっぱり話をして、しっかりそこで納得していくっていう手法も大事だと思うんですけど、本人の中で本人が1人で部屋でいたり、生活の中で消化していく類のものがあって、そういう時にはあんまり追いかけていって話しかけて、その本人が消化していくプロセスを止めないほうがいいことがあるんですね。自分の内側の中で起きている戦いなんですよね、これ。なので、そういうときには時々それが噴出してわけが分からないことを言ったりすると思うんですけど、それは内側で何か起きてることの現れなんだと思って、静かにそれを置いておいてあげると、何かご自身の中でね、消化していくんじゃないか。

ただ、それがただただほったらかして突き放すと、帰る場所も大事なので、私にとってみると家で朝ごはんと晩ごはんがあったっていう、これが大きかったなっていうふうに思ってます。ですので、まあ大変ですけども(笑)、男子ってそういうもんなんだと思いながらですね、ちょっとご自身で、自分自身の何か趣味を見つけられるとか、何かしながらやっていただければなと思います。私も今振り返って「お母さんごめんなさい」と思うことが毎日ですね。

12:13
『自分の子どもがあまり好きじゃない』(匿名)

それでは次の方のご質問ですね。匿名の方からですね。『人に相談しづらいのですが、自分の子どものことがあまり好きではないです。まだ子どもは小さいのですが、一緒に遊んであげていると、すぐ自分が疲れて休みたくなりますし、もっと自分も遊んだり勉強をしたりしたいのにな、とか考えてしまいます。子どもを大声でどなったり、叩いたりはしていませんし、極力、感情に振りまわされないようにしているつもりですが、子どもを傷つけず、私自身もきもちがモヤモヤしないで済むような、何か良い方法などありましたらお願いします。』

12:49
これ、ありがとうございますね。これとっても言いにくいことで、普段はあんまり言えないことなんじゃないかと思うんですけど、それを抱えていらっしゃったので、すごいしんどかったろうなと思います。

でも、私、実はこういう方多いと思うんですね。で多いっていうのは、その感情と、そのことを罪に感じてるっていう人が多いんじゃないかと思うんですね。つまり、「子どもは好きでかわいくてたまらない」っていう感情であるべきなのに、私はどうもそういう気持ちになっていないということが苦しいっていうものですね。でも考えてみると、本来は子どものことが好きとかかわいいって思わないことは罪でも何でもないわけです。それでしっかりお子さんの面倒というか、環境を整えていって、本人が育っていけばそれでいいわけなんですよね。

もちろん内面的な愛があるに越したことはないって思うかもしれないですけど、でもこれはこれで行き過ぎた愛みたいなものもあって、愛と依存ってそんなに綺麗に分かれてないわけですよね。「子どもが大好き大好き大好き」って言いながら30、40歳になるまで自分の子どもを抱きしめて離さなくて自立を許さないっていうパターンも結構ありますから、一体化しちゃってですね。で、そうなるとそれはそれで厳しいわけですね。「すごい厳しくしかるような親がいて、それがもうすごい嫌だった」っていう子どもの苦しみもあるんですけど、一方で、とっても優しいお母さんが「なんとか君は優しいから、きっとこんなふうにできるよね」とか、「なんとか君はとってもいい子だから、これは我慢できるよね」っていうふうに来られると、「我慢しろ」よりは抵抗しにくいですよね。なぜ抵抗しにくいかっていうと、「我慢しろ」っていうと、相手の責任で言ってくるんで「この野郎」って言えるんですけど、「あなたは優しいからできるよね」って言われると、それをしなかった場合に自分の否定になっちゃうわけですね。実はこの親子で依存関係になる時に、こんなふうに相手を尊重していながら相手に選ばせることで、相手に責任を感じさせるっていうことが起きていて、それに苦しんでいる30、40代の男性って、実は私は多いんじゃないかと、女性もいるかもしれないですが、多いんじゃないかと思うんです。だから一見優しいがゆえに余計に外からも分かりにくいパターンなんですけど。

まあともかく今悩まれてることは、私はあんまり関係ないとか、しんどいとかですね、そのへんが苦しいっていうのは大変だと思うんですけど、そういう気持ちになれないこと自体は全然問題ないし、特別なことでもないんじゃないか、と思うんですね。人によって他者に対しての依存を感じるのって強い弱いがありますから、子どもに対しても客観的でいられる人って結構いると思うので。

そのうえでじゃ何にフォーカスするといいかっていうと、やっぱり結局行動なんだろうと思うんですね。自分の行動がしっかり、1番の子育ての大事な点は、子どもを愛してるとか好きだっていうことよりも、子どもの安全な環境を守るってことだろうと思うんですね。それを守った上で子どもと遊ぶとかいろいろありますけど、それはどっちかって言うとプラスのもので、基本的には子どもがご飯を食べて安全な環境にいるっていうことが保てれば、まあそれで子育ての目的は、それは大変なんですけどね、あちこち行ったりする子どもが(笑)。でも、それが子育ての8割ぐらいだろうと思うんです。それでプラスでそういうものがあったらいいけど、まあそれは別になくてもすくすく子どもは自分で育つと思うんですよね。なので、そんな感じでいいんじゃないでしょうか、自分スタイルでやっていきながらでいいんじゃないかな、と思います。それで問題がすごく起きるのかって心配されてるとしたら、私はそれは全然問題ないと思います。

私なんかはどっちかって言うと、子どもへの愛が強すぎて、やっぱり途中でこう子育てのあいだに本当にぶち切れたりとかですね、まあ叩くのも実はあったことありますけども、やっぱり愛は愛で、愛したら感情に振り回されて大変なんですね。だから本当に子どもへの距離の取り方って難しいなと思うんですけど。こんなふうに社会的に言っちゃいけなさそうだけど、こういう気持ちになってるっていう人って私すごい多いと思うので、こういう場所ででも、いろいろお話されたらなと思います。

17:44
『子どもが切れやすい』(匿名)

もう1つぐらいご質問いきましょうか。匿名の方からですね。『小学生の子どもがきれやすくて困っています。もっとやさしい心の持ち主になってほしいのですが・・・。』

17:59
これはですね、あるあるなんですけど私もそうだったんですよ子どものとき癇癪(かんしゃく)がひどくて。これはもう少なくとも優しくなるっていうことは期待しないほうがいいと思います。もうちょっと正確に言うと、切れないから優しいわけでもないと思うんですね。むしろ優しすぎて切れるパターンが結構あってですね。それは何かって言うと、「そんなことされたら嫌だ」とかですね。そういうことを素直に言えたら、内側にたまらないわけですね。でも、それが言えない、相手の気持ちをおもんばかって言えないって時に内側にたまってくるものがドカンとなるっていう場合が切れる人が結構いたりして。なので、優しさとはまたちょっと違う話だと思うんですね。

とはいえ、切れることが起こす問題が多いと思うので、それをどうやって自分で抑制していくかということを学んでいかなきゃいけないと思うんですけど。まず1つは自分の気持ちを言葉にして言えるっていうことが切れないためのとても大事なスキルなので、自分自身がしっかり自分の気持ちを言葉にして言うと。これをやっていけばいいんじゃないかなっていうふうに思います。

もう1つは優しい心の持ち主。優しい心の持ち主は、弱かったりもするんですね、難しいバランスなんですけど。やっぱりある状況によって自分を引くか、自分が出るかっていうことって、人生の中ではそれがプラスに出るときもあればマイナスに出るときもあるんですね。優しすぎて社会の中で苦しんでる人もたくさんいるので、こんなふうな人になってほしいと思うけれども、まあ子どもは他人なので、子どもは子どもで違うキャラクターを持って生きていってるという中で、なるほど、この子の人生はこういう人生か、だけど切れて問題が起きたりとか社会の中の軋轢を起こすっていう所は、うまくマネージしなきゃいけないけれども、この性格自体はすごいアイデアを、癇癪を持ってる人ってアイデアを生む人と近いと思うんですけど、なんかすごいアイデアを生むとかエネルギーがあるとか、そんなことがあったりするかなと思うので、それはそれで認めてあげてほしいなと思います。ちなみに、私の人生は走り出してこれがおさまりました。つまり、そのエネルギーを別の運動にぶつけろということで、それにぶつけるようになってから落ち着いていったなというふうに思っています。

20:36
さて。ということで、ここまでは「子育て」に関するお悩みをご紹介しました。次回はですね、「伸び悩み」に関するご質問に答えていきたいなと思います。

Episode